Poetry of the help and past poetry
--- four ---

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「・・・キキョー?あれ?俺なんで・・。」


目を覚ましたジャスティは、完全には覚醒していない様子で起き上がった。


「おはよう。体は平気?ジャスティ、昨日倒れたんだよ。覚えてる?」

「あぁ、そうだった。昨日はちょっと疲れただけだから、もう平気だよ。」

ジャスティは笑顔を浮べる。


無理しているようには見えないが、たとえ辛くても平気だと言いそうな気が
するので安心はできない。


「本当に?無理しないで。」

桔梗が疑わしげに見ると、ジャスティは苦笑する。


「本当に平気なんだよ。昨日はエネルギーを使い果たした感じだったけど
 一晩眠れば回復できたし。」

「ならいいんだけど・・・。」


「キキョーは心配しすぎ。本当に平気だから、そんな顔するなよ。」


自分は今どんな顔しているんだろう、と思ったがその事には触れずにおく。






「あの、昨日は助けてくれてありがとう。それと、私のせいで無理をさせて
 ごめんなさい!」

両手をひざの上に置き、頭を下げる。

「いや、もとはといえばこっちの不手際だし、キキョーが謝ることなんてな
 いよ。だから顔上げて。」

ジャスティの手が桔梗の肩に触れ、促されるように顔を上げると目が合った。








ジャスティはつらそうな表情をしたので、やはり体のどこかが悪いのかと思
ったが違った。


「ごめんな。怖い思いをさせて。俺が守るって言ったのに・・・。」


「平気だよ。ちゃんと守ってくれたもん。昨日も・・・それに今までだって
 ずっと守ってくれてたでしょう?」


桔梗の言葉に、ジャスティは驚いたような顔をした。


「なんで・・・。」




「昨日ね。フリードライツが教えてくれたの。ずっと守ってくれてたんだよ
 ね。リタンから、それに私に負担がかからないようにと、この国の人たちか
 らも。だから、ありがとう。」



「俺は・・・何もできなかったよ。結局キキョーはこの世界に来てしまった
 そのせいで俺の事情に巻き込むことになってしまった。リタンにだって、あ
 と少し遅かったらどうなっていた事か。」




ジャスティはグッと両手に力を入れて、顔を歪める。


桔梗はジャスティの手の上に自分の手を重ねた。


「でも私がこうして無事で居られるのは、あなたのおかげ。もちろんフリー
 ジアやフリード、ラティスもね。」




ジャスティの目を真っ直ぐに見つめる。



「それにね。ジャスティの事情って言ったけれど、もし私が本当にミロンの
 生まれ変わりなら、巻き込まれたんじゃなくて初めから私も当事者だった
 ってことだからジャスティが気にする事じゃないよ。」


「キキョー・・・。」


「だからね。ジャスティには本当に感謝しているの。色々なものから私を守
 ってくれて、ありがとう。助けてくれて、ありがとう。」


「俺は・・・。」

ジャスティが何か言おうとしたのを遮り、ジャスティに笑顔を向ける。





「私を見つけてくれて、ありがとう。」






その言葉を聞いてジャスティは泣きそうな顔をしたような気がした。


もしかしたら見間違いかもしれないが、桔梗には確認できないので判らない。

でも、どっちでも良かった。



抱きしめられた腕の中で、桔梗は目を閉じる。


両腕をジャスティの背中に回し、鼓動に耳をすませると“帰ってきた”とい
う実感が湧いてきた。
















しばらくそのままでお互いに黙っていたが、やがて足音が聞こえてきたため
にゆっくりと離れる。

お互いの視線が合うと照れくさかったが、自然と笑顔になった。


手を伸ばすと、ジャスティは桔梗の手を握ってくれる。



急きたてるようなノック音がしたかと思えば、見覚えのない男女が部屋に入
ってきた。




男の人は30代くらいで赤い髪に水色の瞳を持ち、どことなくフリードライ
ツに似ているので一瞬フリードライツが戻ってきたのかと思ったのだが、年
齢も違えば瞳の色が違う。



女の人は年齢はわからないが若々しい美しい女性だ。
淡い金の髪はストレートで腰に届くほどあり、金色の瞳をしているがジャス
ティと面差しが重なる。


一目みただけで間違いなくジャスティの母親である事がわかった。





「ジャスティ・・・あれほど無理をしてはいかんと言ったというのに。」

「そうですよ。あなたにまで何かあったら私は・・・。」


「父さん、母さん、心配かけてごめん。俺は平気だから。」


ジャスティが微笑むと、二人とも安心したように息を吐く。




王様と王妃の登場に桔梗は不安と緊張で、ジャスティと繋いでいた手に無意
識に力を入れてしまった。

ジャスティは、桔梗の髪を撫で安心させる為に微笑む。

その表情を見て夫婦は驚いたように顔を見合わせた後、桔梗に視線を送る。



それに気がついたジャスティは、二人に桔梗を紹介する。


「父さん、母さん。彼女はキキョー。わかってると思うけど、ミロンの生ま
 れ変わりだ。」

桔梗が頭を下げると、二人は微笑んでくれた。


「キキョー、父さんと母さんだ。見たらわかると思うけど・・・フリードの
 両親でもある。」

「じゃぁ、フリードとジャスティは兄弟なんだ・・・。」



でも、フリードは王子ではない??



桔梗の疑問に気づいたのか、ジャスティは説明してくれた。


「うん。俺とフリードライツは異母兄弟なんだ。フリードの母親はずっと前
 に亡くなってしまっていて、今は母さんがフリードの母親代わり。」


異母兄弟。

王族なら珍しい事ではないはずだ、でもあまりいい気がしないのは一夫多妻
が許されない現代の日本で育ったせいかもしれない。


桔梗の複雑な表情を見て、ジャスティは笑った。



「ちょっと複雑なんだよ。父さんは浮気をしたわけでもないし、妾が居たわ
 けでもない。だから父さんのこと軽蔑しないでやってね。」

「え?!そんな!軽蔑だなんて!!」


慌てて否定すると、3人に笑われた。


「ふふ、可愛らしい人。ジャスティと仲良くしてやってね。」

「は、はい!」

ニッコリと笑う顔はやはりジャスティに似ている。

そして同姓なのにドキドキしてしまうくらいに綺麗だ。



「若い二人の邪魔をするのも悪いし、私達はもう行こう。可愛いお嬢さん、
 また今度ゆっくりと話そう。」















二人が出て行くと、桔梗は大きく息を吐いた。

「はぁ、緊張した。」

「そんなに緊張しなくてもいいのに。」



ジャスティは苦笑して言うが、王様や王妃様を前にしてリラックスなど出来
るはずもない。



「だって王様だよ?!王妃様だよ?!」

「・・・俺だって王子だけど?でも平気だろ?だから同じでいいのに。」

「ジャスティは王子である前にクラスメイトだったから・・・最初から王子
 だって知ってたら今みたいな態度でいられないって。」



「じゃぁクラスメイトとして出会えて良かった。キキョーによそよそしい態
 度をとられたくないな。」


ジャスティが優しく微笑んで言うので、自然と頬が熱くなる。





ジャスティの手が桔梗の頬に触れ、耳に触れる。

冷やりとした手の感触は、熱った肌には心地よい。



「・・・使ってくれてるんだな。」


桔梗の耳に飾られているのは、町でジャスティが買ってくれた翡翠の耳飾。



「ジャスティがくれたものだから・・・大切に使わせてもらうね。」





ジャスティと視線が合い、どちらともなく顔を寄せた。






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