待てなかった
二人で過ごす幸せを知ってしまったのだから
もう昔のようにはいられない

一人の辛さには耐えられない






World poetry with the protection of Fenrir
--- one ---

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どのくらい時間が経ったのだろう。
いつの間にか、びしょ濡れだった服も少し乾き始めている。
いつまでも、こうしている分けにはいかない。



どこへ向かえばいいのか分からないけれど・・・。
誰かが迎えに来てくれる保証なんてない。
もしかしたら、人が住んでいる場所があるかも知れないし。


そう自分に言い聞かせて、立ち上がる。直感に従って行動してみるしかない。
桔梗は近くにあった、長い木の枝が掴み、周りを見渡した。
猛獣とか居たら、こんな物で乗り切れる分けはないけれど。
気分的には、無いよりましだ。


ぐるりと周りを見渡してみる。
自分が落ちた・・・池よりは大きく、湖には小さいような水溜まり・・・を中心に
木が茂っている。どのくらい、続いているか分からないけれど、森のようだ。




空を見上げると太陽が輝いている。


この明るさだと日中だよなぁ・・・・。


ということは、日陰の方向から考えて、自分の正面(湖側)が南だろう。
ここで桔梗のとる選択肢は・・・。

一つ、北方向に森に入っていく。

二つ、湖に沿って西か東に行き、森に入る。

三つ、湖の反対側に回って、南から森に入る。

四つ、ここに留まる。

選択肢の四はもう実行したので却下。すると、三つのうちのどれにするか・・・。




面倒なので、このまま北に進もうと決めて歩き出す。
耳を澄まして何かの音が聞こえないか確認し(鳥や虫らしき声は聞こえる。)
視界になにか現れないかと周りに目を配りながら進んでいく。









歩き出してから30分は経ったと思う頃、やっと何かの音が聞こえた。
地響きと、多くの足音。たぶんたくさんの動物だろう。


・・・・・こっちに来る?!


音と地響きがだんだん大きくなってきている。
隠れるべきかどろうか・・・・でも隠れる場所がない。
木に登るのも出来そうにないし・・・。


とりあえず木陰に隠れて様子を探ることにした。
じっと待っていると。白い集団が見えたきた。


どうやら白馬に乗っている、真っ白な服をきた人間の集団だ。
そして驚くことに、中世の騎士のような格好をしている。
腰に剣があるのも、はっきり見える。


声をかけていいんだろうか。
映画か何かの撮影?・・・でも機材が何もない。
それに英語じゃないとダメだろうか。
金髪の人とかいるし、どう見たって外人だよね?
・・・どうしよう英語は自信ないのに。


様々な事が頭に浮かぶ。けれども、あまりグズグズはしていられなかった。
今はちょうど桔梗の傍で休憩をとっているようだが、そのうち行ってしまうだろう。


桔梗は覚悟を決めて、深呼吸すると、白い騎士団の前に立った。

一斉に注目されて、なんとも居心地が悪い。


しかし、そんな事は言ってられず。勇気を振り絞って声をかけた。

「あの・・・じゃなくてっ!えっと・・・エクス キューズ ミー?」

すると男達は驚いたように、顔を見合わせると、興奮したように騒ぎだした。
何語か分からないがロシア語っぽい気がする言葉で荒々しく口論しあっている。


どうしよう、何かまずかったのだろうか。


困りきった桔梗はそのままその場で固まってしまい、ただ騎士たちの成り行きを
見守るしかなかった。

騎士たちの口論が白熱してきた様にみえた頃、突然騎士たちの後ろからリーダー
らしき男が現れた。彼が大きな声で怒鳴ると、周りは一斉に静かになる。
その様子に満足気に頷くと、男は桔梗の前に立ち、上から下までじっと観察する。
とても居心地が悪いが、懸命に耐える。


やがて男が何かを言った。
どうやら桔梗に話しかけたようだが、桔梗には通じない。
とりあえず首を傾けて、言葉が通じていない事をアピールする。


男は頷き、傍にいる控えている男に何かを言った。
男に何かを言われた男は頷くと睨むような視線を桔梗に送り、近づいてきた。


様子がおかしいと思った桔梗は後ずさるが、すかさず男の手が桔梗の腕を捕らえた。
そして、すぐに他の男が縄を持って近づいてき、抵抗する桔梗の頬を殴る。


桔梗は突然の痛みに呻くが男達は荒々しく桔梗の体をロープで縛り、そのまま引き
ずるように歩かせた。
何処かへ連行すようだ。


痛みと恐怖で気を失いそうだが、なんとか気力を振り絞って桔梗はこれからどうな
るのか、自分に何が起こっているのか、どうしてこうなったのを考えていた。



しかし、何も考えられないのが実状だった。

恐怖、苦痛、混乱。

とても冷静になれるような状態ではなかったのだ。









1時間ぐらい経ち、疲れも出てきて、桔梗も落ち着いて考えられる様になってきた。
とりあえず、今のところは無事なのだ。
どこかに連れて行かれるまでに逃げるしかない。


けれど、どこへ逃げればいいのだろか。
それに、どうやって逃げれるのか。
縄は頑丈で解けそうにないし、足は自由だが走ったところで馬に勝てるわけもない。


絶望を感じながらも、桔梗は懸命に考えた。

諦めるわけには行かない。
このまま分けもわからぬまま死ぬのは御免だ。





その時、前の方が突然騒がしくなった。
騒ぎはだんだん後ろに伝わっていき、桔梗の周りの男達もなにやら大声で喚いてい
る。リーダー格の男が叫んで叱咤しているようだが、先ほどと違って今度は静まら
なかった。



逃げるなら、この騒ぎを利用するしかない。


そう思った桔梗は、周りを注意深く観察して隙を探した。
突然、馬達が騒ぎ出し興奮して、走りだした。
多くの者が馬から振り落とされ地面に打ち付けられた。
桔梗の縄を持っていた男も同様で、思わず縄を手から離した。


桔梗はそのまま走り出た。後ろから喚いてる男の声が追ってくる。
けれども桔梗は振り向きもせず、ひたすら走った。


しかし歩き続きで体が縛られて腕も振れない女の子と、ずっと馬に乗っていて鍛え
ている騎士では、駆けっこ勝負の結果は見えていた。
男は縄を捕まえ、引っ張る。その反動で桔梗は尻餅をつく。
男は怒りながら桔梗に近寄り、剣を抜いた。
恐怖で声も出ない、桔梗は震えながら後ずさる。


男がゆっくり、近づいて剣を振り上げた。

桔梗はギュッと目をつぶった。





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