Poetry of the help and past poetry
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『キキョーには、全部知っていて欲しいんだ。4年前のこと。』

『4年前?』

『俺はガキでフェンリルの生まれ変わりである事の本当の意味も理解してなかった。』

『生まれ変わりである事の意味・・・。』

『その頃まではサルヴィアとも友人として会ってたし、プリムラも生きていた。』





『平和で毎日が楽しくて、俺はそんな日々が続くのだと信じて疑わなかったんだ。』

















小さい頃から、フェンリルの生まれ変わりである事を聞かされて育った。

それを疑う事はなかった。


フェンリルはいつも俺と共にいて、いつだってフェンリルの存在を感じていたから。

フェンリルは父のように、兄のように、または友達のように語りかけてくれた。


そしていろいろな話を聞かせてくれた。

遠い昔の神話時代の話、何代も前の王達の話、妖精の話・・・知っている出来事を
話しては、王として立派に育つようにと見守っていてくれた。











常に控えている護衛や侍女は居ても居ないようなもので、一人の時間が圧倒的に多
かった子供時代。

孤独を感じなかったのはフェンリルの存在とプリムラの存在があったからだと思っ
てる。










俺に本当の兄が居ると知ったのは3歳の頃だけど、フリードの母親は孤児の町娘で
当時、王子だった父さんと恋仲であったのに周囲の策略で引き離されたらしい。


その時にはお腹に子供がいたらしいけど、誰にも言わず一人で産み育てていた。


だけど無理がたたって病に倒れ、その時になって子供の為にしかたなく城へフリード
を行かせた。


フリードの存在を知ると父さんも母さんも喜んで迎え入れ、俺も5歳上の兄のことを
すぐに慕うようになったけど、その事をよく思わない人も少なくなかったんだ。

そのせいでフリードと会える時間は限られていた。










2歳上の友人は、まだ自由に城に入る許可を得てはいなかったし。

自由に城に来るようになったのは、ラティスが10歳になってからだったかな。

それまで何度も会うことはあったけど、一緒に居られる時間は限られていた。

もちろん、フリージアもね。











唯一時間を気にすることなく会うことが出来たのがプリムラ・アイズ・フェンリス
だった。

3歳年上の赤い髪と水色の瞳を持つ美しい従姉妹は、物語に出てくるお姫様そのも
のだった。

幼心に従姉妹を守ってあげないといけないと思ってしまうほどに儚げに感じた事も
あるくらいだ。

毎日のように一緒に過ごしていたせいか従姉妹というよりも姉弟のように仲が良か
った。

幼い頃は二人で遊び、成長するにつれてフリードライツ、ラティス、フリージアと
も一緒に過ごせるようになった。










仲の良い5人組。

時々サルヴィアも加わり6人組になったけれど・・・。

そんな関係に少しずつ変わっていったことに、俺は気がつかなかった。



フリードは気がついていたようだけど、何も言わなかった。














俺が最初に気がついたのは、フリードとプリムラの関係が変わったからだった。

当時17歳のフリードと15歳のプリムラが恋人同士になるのは不思議な事では
ないと思う。



だから、二人が幸せなのだと信じて疑わなかった。

今でも、あれが偽りの幸せであったとは思っていない、だけど・・・。







俺が13歳になる少し前にプリムラは自殺してしまった。







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